内 部 統 制

訓 この頃、新聞紙上で内部統制という言葉をよく聞きますが、どんなことですか。
掘 企業の意思決定手順を明確化し、粉飾決算などの不祥事や事故を防ぐ仕組みのことです。二〇〇六年施行の新会社法に定められていましたが、二〇〇七年九月施行の金融商品取引法により、有価証券報告書の提出が義務付けられている企業に二〇〇八年四月以降に始まる事業年度から「内部統制報告書」の提出が義務付けられました。正確な決算書作成に影響を与えるリスクと予防策を文書にまとめ、経営者が自己点検したうえで会計士の監査を受けます。
訓 何故、急に言われるようになったのですか。
掘 今や日本の上場企業の株主の半分は、外人です。従来の日本人どうしのあいまいさは許されず、又内部統制をきちんとやると、不祥事が避けられると共に経営効率が良くなり、経営実績が上がることがわかったからです。
訓 大企業だけやればよいのですか。
掘 違います。中小企業でもこれをきちんとやると色々なトラブルや不祥事が避けられ、経営効率が良くなることでは同じだからです。
訓 内容的には、どんなものが含まれますか。
掘 ICAAO(内部統制評価機構)がまとめた五つの基準は
①「顧客」や「社会」との良好な関係維持
②「経営資源」の確保
③経営者、経営幹部、管理者および社員個人の能力向上を目指す「学習」の仕組み
④「経営管理」の実践と改善
⑤「知の経営」の実現 です。
訓 ちょっと抽象的で良くわからないのですが。
掘 大きくは、全体的統制と業務プロセス統制があり、
①取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制。
 例えば、リスクの高いものからマトリクスを作り、どの部分を取締役会にあげるか決める等です。モニタリングと自己浄化が必要です。
②取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制。
 例えば、文書の保存管理はどうするか、法的チェックは何時の段階で弁護士にチェックして貰うか、決まった社内文書をどのように伝達するか、等です。
③損失の危険、管理に関する規程その他の体制。
 こげつき債権の防止、商品による危険の防止、秘密漏洩防止策等、現場を良く調べた上で作ることです。
④取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制。
 例えば、職務分掌規程や経営計画、事業計画をきちんと文書化する、等です。
⑤使用人の職務の執行が、法令及び定款に適合することを確保するための体制。
 リスク統制マトリクスや業務マニュアル、教育研修システム、内部通報制度、等を作ります。
⑥監査役の独立性及び監査役への通報システム
 監査役の人事考課や懲戒に関しては、事前同意を要するとか、重要会議への出席、記録閲覧の保証、従業員等からの報告聴取権を決める、等です。
 又、監査役は財務報告に関し、統制環境、リスクの評価と対応統制活動、情報と伝達、情報技術への対応、等、総合的に細かくチェックしなければなりません。
訓 そういうことを文書化するのは誰がやりますか。
掘 大事なことは、文書課の人が、お飾りのものを作るのでは意味がありません。全社的に問題点を下から吸い上げ、皆で良く協議して作っていくことですが、責任者はある程度、勉強が必要です。個別の規程は顧問弁護士と良く相談して下さい。

住宅瑕疵担保履行法

○Q 住宅瑕疵担保履行法という法律が成立したと聞きました。どんな法律ですか?
○A 正確には「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」と言って、平成一一年六月に制定された住宅品質確保法(「住宅品質確保の促進等に関する法律」)に定められた瑕疵担保責任の履行を確保するための資力確保措置を義務付ける法律です。
○Q 住宅品質確保法に定められた瑕疵担保責任とはどのようなものですか?
○A 新築住宅の売主及び請負人が、構造体力上主要な部分と雨水浸入防止部分を対象部位として負う民法の定める期間より長い一〇年間の瑕疵担保責任で、特定瑕疵担保責任と言います。
○Q 住宅瑕疵担保履行法では、新築住宅の売主及び請負人であれば、誰でも、特定瑕疵担保責任について資力確保措置が義務付けられているのですか?
○A いいえ。特定瑕疵担保責任について資力確保措置が義務付けられているのは、建設業法の許可を受けた建設業者と宅地建物取引業法の免許を受けた宅地建物取引業者に限定されています。
○Qなぜ特定瑕疵担保責任について、資力確保措置が義務付けられたのですか?
○A 平成一七年に発覚した構造計算書偽装問題で、新築住宅の売主等に充分な資力がない場合や、瑕疵担保責任の履行請求をする住宅購入者等が多数の場合には、住宅購入者等が極めて不安定な状態におかれて、住宅品質確保法で特定瑕疵担保責任が定められても、実効性に乏しいことが明らかになったからです。
○Q具体的にどのような資力確保措置が義務付けられたのですか?
○A 瑕疵担保責任の履行を確保するために、毎年の基準日において、過去一〇年間に引き渡した新築住宅の引渡戸数(供給戸数)に応じて算定される瑕疵担保保証金を供託することが義務付けられました。
 但し、業者が「住宅瑕疵担保責任保険」という保険を掛けた場合は供託の必要がなくなります。なお、故意、重過失による瑕疵の場合は、一戸あたり五〇〇円で拠出される基金で対応されることになります。
○Q 建設業者等が特定瑕疵担保責任を負う場合に、何らの対応をしないときには、住宅購入者等は供託所に直接、支払い請求できるのですか?
○A ①瑕疵に基づく損害賠償請求権について裁判による判決等の債務名義を取得した場合、②当事者間で公正証書等を作成し、建設業者等が損害賠償責任の存在及び内容を認めている場合等は、住宅購入者等は、瑕疵の修補による損害の額について供託所に直接、支払請求することができます。
 又保険がかけられている場合は、裁判でなく弁護士会にある住宅紛争審査会で多額の費用を必要とすることなく解決できます。
○Q この法律の施行はいつになりますか?
○A この法律の公布は平成一九年五月三〇日ですが、この日から、住宅瑕疵担保責任保険法人の指定に関する規程は一年を超えない範囲内で、瑕疵担保保証金の供託又は保険契約の締結の義務に関する規程は二年六ヶ月を超えない範囲で、いずれも政令で定める日からそれぞれ施行されます。


夫の負債に妻は?

Q 夫の負債については、妻も支払う義務がありますか。
A 現在の法律では夫婦の財産関係は別々に扱われることになっていますので、原則として、夫の負債については、妻は支払う義務がありません。但し、夫婦の日常の家事に関して夫が負債を負った場合には、妻も夫と連帯してその負債を支払わなければなりません。又、妻が夫の負債について連帯債務者や保証人になっているときは、妻は夫の負債を支払う義務があります。
Q 日常の家事に関して夫婦が連帯して責任を負うのはどのような場合ですか。
A 法律には「日常の家事に関して法律行為をしたとき」と定められているだけで、具体的には裁判所が決めることになります。これまでに、食料品や衣料品の購入代金、家庭用光熱費、家賃、テレビ等の機器の購入代金、家族の医療費、子供の教育費等が、それに当たるとした裁判例があります。借入金については、日常の家事にあたらないというのが多くの裁判例ですが、中には、その使途を検討のうえ借入金も日常家事に該当するとした裁判例もあります。
Q 夫が勝手に保証人欄に妻の名前を書いてしまったときはどうなりますか。
A 妻がそのことを承諾していなければ、妻は保証人になることはありません。但し、妻が保証人になることを承諾していたり、あるいは、そのように債権者に思わせるような態度をしていたりすれば、保証人とされる場合があります。
Q 夫が死亡したときには夫の借金はどうなりますか。
A 妻は、積極財産を何も相続しなくても法定相続分に応じて夫の債務を相続することになります。但し、相続の開始されたことを知ったときから三ヶ月以内に相続放棄をすれば、夫の債務を負担する必要はなくなります。しかし、相続放棄をすると、夫の一切の財産を相続できなくなりますので、放棄するか否かはよく考える必要があります。なお、妻が夫の借金の保証をしていれば、相続放棄をしても保証債務は免れません。
Q 夫と離婚した場合には、妻の責任は軽くなりますか。
A 離婚すれば、日常家事債務を負担することはなく、夫の負債を相続することもありませんので、その限りで責任が軽くなるとは言えます。しかし、それ以外では、離婚してもしなくても変わりはありません。なお、夫の借金を保証していれば、離婚しても保証債務は免れません。
Q 債権者から法律上の根拠もなく「夫の借金を妻が払うのは当たり前だ」と強硬に言われた時にはどうしたらよいですか。
A 夫に代わって払ってあげようと決めたときは別として、支払いを拒否すると決めたときには、断固拒否すべきです。もし、それでも債権者が強硬に妻に対して請求してくるようであれば、警察に相談して違法な取立を禁止してもらうか、又は、弁護士に依頼して妻の代理人として、支払いを拒否する文書を出してもらうのがよいでしょう。