寄 与 分

Q 五年間寝たきりだった父が先日死亡しました。父は自宅の不動産と若干の預金を遺産として残しました。私は学校卒業後家業を手伝ってきており、父が倒れた後は妻が看護をしてきました。最近、私のたった一人の弟から遺産の二分の一を分けてくれと言ってこられましたが、これに応じなければなりませんか。

A 民法には寄与分制度が定められており、あなたにはその寄与分があると思われますので、弟さんには二分の一までは分けてあげる必要はないと思います。

Q 寄与分制度とはどんなものですか。

A 相続人の中に、被相続人 (本問では父)の財産の維持または増加について特別の寄与をした人がいる場合に、その人に対して法定相続分または指定相続分 (遺言で指定された相続分) 以上の財産を取得させる制度です。

Q どういう場合に寄与分が認められるのですか。

A 家業に従事してきたとか、扶養あるいは療養看護をしてきたとか、金銭を出してあげたとか、財産の管理をしてきたなどで、相続財産の維持・増加について相続人が何らかの形で協力貢献してきた場合に認められます。

Q そのようなことを少しでもしていればば寄与分が認められるのでしょうか。

A 家族にはそれぞれ扶養義務がありますので、通常の親子、兄弟間で行なわなければならない程度の協力では寄与分は認められません。それ以上「特別に」協力したと考えられる場合にはじめて認められます。

Q 父の看護をしてきたのは私の妻ですが妻には寄与分はないのですか。

A ありません。ただし、あなたに替って看護してきたわけですからあなたの寄与分として認められると思います。

Q どの位の寄与分が認められますか。

A それぞれの事情によって異なりますので一概に言えませんが、今までの裁判例ですと五%から五〇%というところです。

Q 弟は、私が苦労してきたことは認めてくれましたが、自分には遣留分でも四分の一の取り分があるのだから、それを下回る訳にはいかないと言っていますが、どうでしょうか。

A 制度上は寄与分と遺留分とは別個の制度ですが、実際には遺留分に食い込んで寄与分を認めてもらうのはむつかしいと思います。


外国人労働者問題-入管法改正をめぐって-

一 近年の日本経済の著しい発展および国際化に伴い、来日する外国人入国者の数も増え、法務省入国管理局の統計によれば昭和六三年度で二四一万人を超えたということです。そして、日本の経済力を反映してか、国内労働市場における外国人労働者の数もますます増える傾向にあります。

二 ところで、これら外国人の出入国行政は「出入国管理及び難民認定法」という法律(いわゆる入管法)に則り行なわれておりますが、この法律がこのたび改正され本年六月一日から施行されることになりました。

改正前の法律によると、日本で就労することのできる在留資格は、

○一 貿易、事業、投資活動を行う者
○二 研究指導または教育を行う者
○三 収入を伴う演劇、演芸、スポーツ等の興業活動を行う者
○四 高度技術の提供のため招へいされる者
○五 熟練労働者(コック、菓子職人等)
○六 語学教師など外国人特有の技能、感性を生かして就労するケースで法務大臣から個別的に許可を受けた者

に限定されており、そのほかには、大学や専門学校の留学生と日本語学校等で学んでいる就学生について、週二〇時間の限度でアルバイトをすることが認められるのみでした。

したがって、いわゆる単純労働者あるいはホステスについては、これらに就労するための在留資格はありませんでした。

ところが、単純労働の分野における国内の労働供給は不足がちのため、この分野での外国人労働者の数は増加の一途をたどり、先の入国管理局の統計によると昭和六三年度に摘発された不法就労労働者数は一万四〇〇〇件余に及んだということです。

三 新しく施行される改正法は、外国人の受け入れ範囲を一部拡大したものの、単純労働者については改正前と同じく受け入れを認めず、留学生、就学生のアルバイトについては許可制をとっています。そして、不法就労についてはより厳格な対応をとる方向にあり、不法就労者を使用した人または会社までも罰する規定 (三年以下の懲役または二〇〇万円以下の罰金) を新設するにいたりました。

しかし、業種によっては単純労働分野における外国人労働者の受入れを求める声もなお根強くあり、この受入れの是非については、改正後もなお検討されるべき問題であるようです。

四 なお、外国人労働者が入管法に違反して不法就労をすると、強制退去処分により、出国を余儀なくされるわけですが、悪質なリクルーターや雇用主はこれを逆手にとって低賃金での長時間労働などを強要し、一方、就労者側は不法就労の発覚をおそれて公に権利救済を求めることができないという病理現象が生じています。

そこで東京弁護士会では、これら外国人労働者の人権救済のため、会内に「外国人人権救済センター」を設置し、本年三月八日から毎週木曜日午後一時~四時まで相談等に応ずる体制をとっております(右センターの電話〇三ー五八一ー二三〇二)。


仮差押について


A 氏 友人が、不動産の仮差押を受けたというので、今日は仮差押についてご説明いただきたいのですが。
弁護士 わかりました。一般に債権を回収する場合、相手が任意に払ってくれない場合は、裁判で判決を得るか、公正証書で相手の財産を差押えして、強制的に回収するわけですが、判決を得るまでには時間がかかるので、その間に債務者の財産が散逸してしまっては、せっかく裁判で判決を得ても差押えるものがなくなってしまうので、裁判を始める前に一定の疎明(おおよその証明)をして、仮に差押えておく制度です。

A 氏 仮差押には保証金が必要ということですが。
弁護士 そうです。疎明だけですから、裁判をやって債権者が負けた場合、債務者が受ける損害を担保する為に、一定の保証金を供託するか、あるいは銀行の保証書(ボンド)を差入れるわけです。

A 氏 仮差押はそうした財産保全の効力だけでしょうか。
弁護士 民事訴訟法の原則は、そういうことですが、現実には仮差押をすると、相手が新たに抵当をつけにくいので、早く解いてもらいたいから交渉が有利に運んだり、債権者が倒産したような場合に発言力が強くなります。

A 氏 仮差押は、不動産だけでなく、債権に対してもできるのでしょうか。
弁護士 勿論できます。債権に仮差押がされますと、第三債務者(債務者に対し債務を有する者)は、供託することができます。これを執行供託といい、この後他の債権者はその差押手続きに配当加入できなくなります。

A 氏 不動産に仮差押をした後で抵当権がつけられた場合、優先関係はどうなるのでしょうか。
弁護士 良いご質問です。民事執行法第八七条二項に規定があり、仮差押の登記後に抵当権の登記をした者は、仮差押債権者が本案の訴訟において敗訴し、又は仮差押がその効力を失ったときに限り、配当等を受けることができることになっております。

A 氏 ありがとうございました。大変良くわかりました。